店頭でも、ネットでも、ギャッベ(ギャベ)と名の付くカーペットが多くのお店で販売されていますが、どれを選んだらいいの?
目次
- 1.ギャッベの産地
- 2.ギャッベの織り方とその種類
- 3.ギャッベの厚さ
- 4.ギャッベ色柄の意味
- 5.これって不良品なの?ギャッベへの不安について
- 6.ギャッベの経年変化
- 7.ギャッベを購入する時は?
- 8.その日を思い出すという価値、月日を振り返るというアイテムとしてのご提案
1.ギャッベの産地
ギャッベ人気の上昇に伴って、多種多様なカーペットが出回っていますが、大まかに3つに分けられます。
1. 本物の「ギャッベ」
ギャッベは、遊牧民が沙漠での移動生活のために生みだした生活必需品です。家畜の羊の毛を刈って、糸に紡ぎ、自然の草木で染めて、カシュガイの女性が家事の合間にギャッベを織っていました。ギャッベの織り方は、母から娘に引き継がれていきますが、どんな色や柄にするかは本人の自由。結婚する時には自分で織ったギャッベを嫁入り道具として持参します。
ペルシャ絨毯には垂直織機と水平織機があり、どちらも縦の糸に糸を一目一目結び付けてパイル(毛足)を作るため、とても手間と時間が掛かります。そのため、どうしても価格は高くなりますが、ほつれや糸が抜けること無く、たいへん丈夫で長持ちします。ギャッベは水平織機で織られます。
・イランのファルス州シラーズ地方の遊牧民の女性が織る手織りのじゅうたんである。
・縦の糸に糸を一目一目結び付けてパイル(毛足)を作るため、とても手間と時間が掛かる。
・価格は高いが、ほつれや穴になりにくく大変丈夫で長持ちする。
2. ギャッベを真似て織られた「コピーギャッベ」
寒暖の差の大きな沙漠の生活で快適に暮らせるよう作られるギャッベですが、厚くふっくらしたウールの質感と草木染の美しい色、奔放なデザインがアーティスティックだとイラン以外の海外で人気となり、日本でもギャッベのファンがどんどん増えています。このような、ギャッベ人気の上昇に伴って、イラン以外の国でギャッベを真似たラグ「コピーギャッベ」が織られるようになりました。手織りの土壌があったインドやトルコが主でしたが、年々広がりをみせ、バングラデッシュ、パキスタン、中国など色々な国の製品が流通しています。手織りであっても、糸の結び方が違ったり、「手機(てばた)織り」というイランとは全く異なる作り方をしている品もあります。コストの問題で草木染めのものはほとんどありません。
手機(てばた)織り、生機(きばた)織りとよばれる織り機。糸巻きで糸を横にざっと通していくので、一段織るのが非常に早い。熟練の技術は必要無く、作業効率が良いので低コストで作れます。
手機織り、生機織りの織り方。
縦糸に糸巻で横糸を通して布を織るイメージです。
カーペットを作る場合は、幅のある棒を挟むことで、糸をたるませて毛足を作ります。耐久性は手結びよりも劣る傾向にあります。
・ギャッベの人気に着目して、似たものを製造販売してビジネスにしようが始まりの製品である。
・価格は比較的安いが、品質や織り方はコスト次第のため種種雑多、品質表示を確認しましょう。
・手織りでも糸の結び方が違ったり、てばた機を使った製品は、本場イラン産と作り方や品質が全く異なる。
3.ギャッベのデザインを取り入れた「ギャッベ風カーペット」
ギャッベ人気の上昇に伴って、機械織りのカーペット「ギャッベ風カーペット」もたくさん出回るようになっています。こちらは、工場で機械で生産される工業製品で、ベルギー、中国、日本製が目立ち、素材もナイロンなど化学繊維がほとんどです。デザインだけギャッベの要素が取り入れられています。
工業製品として機械で織るカーペット。ウィルトン織りなど。化学繊維が大部分で、パイル(毛足)も接着剤でつけられるものが多い。
ポリエステル製の機械織り。耐久性は低く、消耗品となる。デザインに人気のある可愛いギャッベのモチーフが取り入れられている。
・そもそも手織りでない、工業製品である。
・デザインだけギャッベを真似ている。
・天然素材でない物がほとんど、品質表示を確認しましょう。
2. ギャッベの織り方とその種類
色々出回っているギャッベですが、ここではイランの本物の「ギャッベ」の織り方についてご説明いたします。
ギャッベは、移動するテント生活の中で織り使われる絨毯です。遊牧テントの床に敷いて、地面の寒さと硬さを遮ることを目的にしているので、とても丈夫に、生地は分厚く毛足を長く、太い糸でざくっと織られています。このようなベーシックなギャッベは、厚くてふかふか気持ちいいのですが、遊牧生活以外で使ってみると、重くて遊び毛が多いのが欠点として目立ってしまいます。その為、時代の変化や海外での需要により、一般の住宅でより使いやすく工夫したギャッベも織られるようになっています。
一般的にペルシャ絨毯は、織りの細かい物の方が上等とされています。また、織りが細かいほど遊び毛が少なく、デザインも緻密になります。ギャッベも織りを細かくすることによって、欠点をカバーしてより快適に使えるようになりますが、細かくなる程、織るのに時間がかかるので、価格が上がるという側面もあります。
織りのランク表※当社比
ベーシック・・・遊牧テント用に最適。太い糸でざくっと粗い織り目。生地は厚くフカフカ。縦糸が上下に2段の作りになっていて丈夫。重い、遊び毛が多いのが使いにい。
アマレ・・・織り方はベーシックと同じで、織りがより細かくなっている。そこそこ重くて遊び毛も少なくはない。
シェカルー・・・縦糸が1段の作りになっていて、生地がしなやかで、軽め。遊び毛も少なくはない。
カシュクリ、ホシナマイ、ルリバフ・・・一般の住宅用に使いやすい作り。織目が細かいので、重たくなく遊び毛が少ない。デザインが繊細。高級ランクで価格が高いのが難点。
・遊牧テントのギャッベは分厚く毛足が長くてふかふか。重くて遊び毛が多いのが難点。
・時代の変化により、一般の住宅スタイルに合わせた使いやすいギャッベが工夫されている。
・悩みで一番多いのが抜け毛・遊び毛。悩まないためには織りの細かなタイプがお勧め。
3. ギャッベの厚さ
前述の「ギャッベの織り方」で、種類の違いによる生地の厚さの傾向に差は見られますが、同じ種類の中でも商品ごとに多少の厚い薄いの違いがあります。これはギャッベが手作りの1点物だからです。
「ギャッベは、生地が厚い方が良いのですか?」といった質問も頂きますが、生地の厚い薄いで、どちらが良い悪いはありません。好みや使い方で選んでください。
・踏み心地、座り心地が、ふっくらフカフカして気持ちいい。
・厚い分だけ重くなるので、取り回しに力が要る。ご年配の方でつまずきやすそうで不安というお声も、ご参考に。
・軽いので扱いやすい。夏場も見た目が暑苦しくなく、年中使いに良い。
・ダイニングテーブルやデスクなど椅子の出し引きがしやすい。
・踏んだり座ったりした時のフカフカ感が少ない。
当店では、全商品について、一枚一枚の商品ページごとに厚みを表記しています。
直に寝ころんだり座らない使い方やテーブル、デスク下には薄手~中手、時々座ったり寝ころんだりで厚さもほどほどに欲しい場合は中手、とにかく厚くてふかふかにこだわる場合は厚手が一般的です。
使用感の目安
薄手:~12、13ミリ位 ギャッベとしては薄手な方。機械織りウィルトンカーペットに比べるとしっかり厚みがあり頼りがいはある。ペルシャ絨毯に近い使用感。
中手:15、16ミリ~ ギャッベとして厚いという感じはしないが、床の硬さは感じられない。
中手:17、18ミリ~ 踏んだ時、やんわりと沈み込む感じが足裏に感じられる。
厚手:20ミリ~ ふかっとした踏み心地、座り心地
・生地の厚い薄いで、どちらにも長所短所がある。
・織りの種類による傾向はあるが、一枚一枚にも手織りならではの差がある。
・厚手薄手で、どちらが良い悪いは無い。好みや使い方で選びましょう。
4. ギャッベ色柄の意味
ギャッベの色は、無染色(生成り)、赤、青、黄、緑の5色を基本のカラーとしています。ギャッベに入れられるデザインや文様は、生活の周りにある身近なもの、好きなもの、願いを織り込む場合が多いようです。
カシュガイの人々は明るく彩り豊かなパターンに美しさを感じ、ギャッベ以外のキリムや絨毯、身に着けるものもカラフルなデザインなのが特徴的です。ギャッベも同じく彩あるもの、あとは、草木の緑や大地の茶色、夕焼け、夜、空など風景を題材としたものが多いです。
このような大自然の風景の中の黒いテントでは、花のような明るい色々が綺麗に見えますし、気持ちも明るく過ごせると思います。
ギャッベの主な文様
羊・ヤギ 遊牧民が家族と同じく大切にする家畜、財産の意味がある。 |
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鹿 子供を大切に育てる鹿は家庭円満の意味がある |
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人 家族や子供を表し、転じて子孫繁栄、誕生成長への願いの意味がある。 |
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生命の木 空に向かってまっすぐ伸びる木は生命力の象徴とされる。 |
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ペイズリー 植物の種や実、葉に由来すると言われ、生命力や魂を意味する。 |
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花 春が来て花々が咲く自然の風景を表している。 |
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ザクロ イランでも女性に良いとされるザクロは、子宝、子孫繁栄の意味がある。 |
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ライオン イランでは王者のシンボル。強さ、権力の象徴。 |
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ラクダ 移動手段であったラクダは財力の象徴。ラクダから馬、そして今は車での移となっている。 |
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鳥 神の使いとされている。木の文様と合せて豊かな緑の象徴。クジャクは美しいものとして描かれる。 |
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四角 大切な水を表す井戸やカナート、幸せが入る窓の意味がある |
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菱型 伝統的に受け継がれる家族の文様でトランジと呼ばれる。 |
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ジグザグ 川の流れ、水が流れる様子を表す。 |
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S字 虫やフックを表し魔よけを意味する。 |
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V字 弓矢の文様で狩りを表している。 |
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X字 長く続くという意味があり、健康や幸せが続くようにという願いがある。 |
自由な感性で織り上げられた一点ものです。また、形の歪みやデザインの曲りは醍醐味!
母から娘へ脈々と受け継がれる伝統と手織りならではの魅力を味わってください。
5. これって不良品なの?ギャッベへの不安について
高額なギャッベを扱う店のセールストークにより、ギャッベは高級・高度で完璧な職人技だと思ってしまう方がいる様に感じます。ギャッベはそういう高尚な物ではありません。もともと遊牧民のギャッベには製図も無く、この位の大きさで、まあ大体こんな色デザインで、とおおざっぱに頭の中で思いながら織り始めました。レベル的にはペルシャ絨毯に到底及ぶものでないというのがイラン国内の共通認識でもあって、カシュガイの女性にとってもペルシャ絨毯は憧れの存在。そのため、織り子さんの頭の中には「ギャッベはおおらかに、ある意味適当に織るものだ。」いう感覚が幼い頃からすり込まれているのです。日本でこんな声がある事を伝えると、「そんな細かい所って使うのに何か問題あるの?」っていぶかしく思っているみたいです。
1. 形の歪み
ギャッベには程度の差はあるものの、長さの違いや歪みという特徴があります。ギャッベは一枚一枚が誰かの手で手織りされていますが、糸結ぶ手の調子は人によって違いますし、各家庭という違う環境での作業です。また、天然の素材が使われていますので、年ごとの違いで素材にも違いが生じます。
2. 柄の途切れ、非対称、曲がり
柄がズレているのもギャッベのよくある特徴です。感覚で織り進めるので、途中で柄が急に途切れていたら、ぼんやりしていたのかな?それとも、気が付いたけどすぱっと諦めたのかな?中には、何とかリカバリにしようとした感じが伝わってくるギャッベもあって、何だか人間味が伝わってきて面白い。
3. 色の違い
ギャッベは色媒介の配合によって様々な色を出すことが出来ます。また、草木は採取する年の違いによっても出る色に違いが生じます。途中で色が違うというのもギャッベにはよくある特徴です。途中で糸が足りなくなった?暗くて色が見えにくかった?なんてこともあるかもしれません。
4. 毛足の段差、高さの違い
ギャッベは織った後、不揃いな毛足を刈りこんで揃えます。昔はハサミで切りそろえていましたが、今はバリカンが主流です。バリカンの力加減の場合もありますが、織りの調子やウールの具合によって平らに刈り込んでも最後に仕上がりをみると均一でない場合もあります。一枚の中で厚い所と薄い所があって、その差が顕著に感じられるものもありますが、ある程度の個体差とお考え下さい。
こういった部分はギャッベの特性であり、不良品ではありません。まずは味わいであるとご理解ください。その上で、それが良いと思うか嫌だと感じるかも自由だと思います。ご自分の好みに合うものを選んで毎日気持ち良く使う。要は相性ですね。当店では、目視で目立つもの、気になる度合いが高いと思われる品に関して商品毎に説明を記載しています。ある程度は手織りらしさの範囲としております為、こういった特性が気になる方は、そのまま注文せずに、事前に必ずご相談ください。注意して確認いたします。サイズがギリギリという場合も必ずご相談をください。
6. ギャッベの経年変化
天然繊維を使用しています。経年変化は当然ということを認識してください。ギャッベはとても丈夫で、何十年と使えます。ただし変化はします。
環境が良く、敷いておくだけで踏んで使わなければ100年でも変わぬ姿でしょうけれど、ものは使えば使うほど摩耗しますし、環境が悪い(湿気、紫外線)とさらに変化は加速します。生き物みたいに歳を取る感じです。
イラン・シラーズにて、使い込まれて擦り切れたギャッベ。摩耗してあちこち破れがありますが、丈夫なので、ここから、まだまだ長く使えます。
使い方、環境によるので一概に何年とは言えませんが、使っているうちに、良く歩くところ、座るところはテーブルの下に比べて摩耗が進みます。
使用による汚れや子どものいたずら書きなどもあると思いますが、ギャッベに関して染み抜きはあまりお勧めしません。あの時の思い出として考えてしまうとか、楽しんで使ってもらえればうれしいです。
7. ギャッベを購入する時は?
1.シンプルにまとめる | 2.モダン・アートなインテリア |
3.一点ものの個性を生かす | 4.好きなものを集める |
5.家族の意見を取り入れる | 6.来客を意識する |
こうしてみるとどのテイストも素敵ですよね。選ぶにあたって、似合わない、合わない、間違いはありません。大事なのは自分とギャッベとの相性です!毎日眺めてハッピーな気分になればそれが正解です。
8. その日を思い出すという価値、月日を振り返るというアイテムとしてのご提案
人生の節目や記念として新調する。壊れずに長く使えるて経年変化も感じられるものだから、時の流れとともに当時を思い出す生活調度品にもおすすめです。
子どもが0才の時に転げ落ちても安心なように敷いた実家のギャッベ。二度落下、見るたび幼い頃と月日の流れを思い出す。
社長が来日した年に個人的に購入したキリム(倉庫に展示)。私たちは年を取ったがキリムは色あせずにあの頃のままで見るたび若かりし当時を思い出し、そしてキリムの丈夫さに驚く。